子宮外妊娠(異所性妊娠)
子宮外妊娠とは、
子宮内ではないところに着床(妊娠)していることを言います。
子宮外妊娠する場所は、
①卵管内(卵管膨大部=卵管の出口付近の膨らんだ部分)、
ほとんどが(95%)が卵管妊娠です。
②頸管(子宮の出口のトンネル内)(1%)
③卵巣(卵巣の表面)、
④腹腔内等です。
★子宮外妊娠の治療の基本は、開腹術又は腹腔鏡による卵管切除術です。
<正常の妊娠>
<子宮外妊娠>
子宮外妊娠になりやすい方は、
①クラミジアや淋病等の性感染症にかかった事がある方。
②体外受精で妊娠された方(体外受精で妊娠された方の1%弱が子宮外妊娠になります)
③以前に子宮外妊娠したことがある方(以前に子宮外妊娠した方の10~15%は再び子宮外妊娠になります)
④IUD(子宮内避妊器具)装着中に妊娠した方。
⑤以前に卵管形成術や卵管結紮術を受けたことがある方。
頻度(起こる確率):
1~2%(1~2人/100人中)
診断:
?妊娠5週では正常に発育している場合では子宮内に胎嚢が見えるはずですが、
①尿の妊娠反応がはっきり出ている(HCGは胎盤で作られるホルモンですが、尿中にHCGが1000∼2000単位/L以上出ている)のに、 又は
②妊娠5~6週なのに、
子宮内に胎嚢(胎児が入っている袋)が見えない場合、
子宮外妊娠が強く疑われます。しかし、下記❶~❸の場合もあり、1回だけでは確定診断できません。
妊娠5週では正常に発育している場合では子宮内に胎嚢が見えるはずですが、もし子宮内に見えないと、❶~❸も考えます。
❶排卵が遅れた為、胎児が小さいので、胎嚢が見えない。 (妊娠反応は,弱い=尿中HCG低値)
➡1週後(妊娠反応は,強くなる)子宮内に胎嚢が見えてくる。
❷妊娠して妊娠反応は出たが、胎児死亡した為に育たない。(妊娠反応は,弱い=尿中HCG低値)
➡1週後(妊娠反応は,より弱くなる)子宮内に胎嚢がまだ見えない。
❸子宮外妊娠の為に、子宮内に胎嚢が見えない。 (妊娠反応は,強い=尿中HCG正常)
➡1週後(妊娠反応は,強いまま)子宮内に胎嚢が見えない。子宮外で、胎嚢や胎児が見えてくる。
1週間位経過を見ると❶~❸のどれか次第にわかってきます。
???子宮外妊娠は、半数は診断がすぐにつきますが、半数は診断がつきにくく、確定診断が難しいです。
子宮外妊娠を確定診断する為に、
下記の検査法(多少リスクを伴うのでなるべくしたくないところですが)を追加することもあります。
①ダグラス窩穿刺:
超音波で子宮の周囲を観察しながら、膣の突当りに長い針を刺して、長い針を子宮の後部の腹腔に刺し入れ、腹腔内に出血が溜まっているかどうか吸引します。出血が溜まっていると、子宮外妊娠がほぼ確定します。
②子宮内容清掃術:
今回の妊娠については妊娠継続を諦めていただき子宮内容清掃術を行います。そして採取した子宮内容物を顕微鏡検査し、「子宮内に妊娠していた痕跡」が有るのか無いのかを調べます。「子宮内に妊娠していた痕跡」が無ければ、子宮外妊娠と確定診断できます。又、
子宮内容清掃術後、妊娠反応が急速に弱くなれば妊娠継続がが終了したことがわかります。なお妊娠反応が引き続き強く出ている場合は子宮外で児が育ち続け妊娠が継続していることが考えられます。
a)子宮内に妊娠している可能性が少しでもある方や、
b)なお「妊娠継続の可能性」を強く期待している方、「妊娠の継続の可能性」をまだ諦められない方は、子宮内容清掃術は躊躇され、さらに数日~1週間経過を観察することになります。
③造影CT、又は造影MRI:
出産希望でない場合は、行えます。
④腹腔鏡:
子宮外妊娠の確定診断をする為に、腹腔鏡を使い腹腔を観察します。子宮外妊娠が確定したら、腹腔鏡を続行し、引き続き子宮外妊娠手術を行います。
子宮外妊娠での腹腔内大出血:
子宮外で児の発育が進み妊娠7週以上になると、卵管内で胎児が大きくなり過ぎる為卵管が破裂して、突然腹腔内に大出血し下腹部激痛が起こります。救急車で来院されることになります。
腹腔内への大出血が起こると命が危ない状態になり輸血も必要になります。勿論すぐに開腹手術する必要があります。
治療法: 基本は手術です。
①手術: 手術は、腹腔鏡手術、又は開腹術で行います。
a) 母体の全身状態が良ければ腹腔鏡で手術を行います。
b) 母体の状態が悪くて、超緊急に手術が必要な場合は開腹手術で行います。開腹手術では下腹部に傷が目立たないように、横方向(水平)に小さな切開を入れて手術します。
手術は、腹腔鏡手術でも、開腹手術でも
卵管切除術(子宮外妊娠している卵管を切除します)。基本的にはこれを行います。
?卵管圧出術:Milking(卵管内容物を乳を搾るようにしごいて圧出する)、
卵管切開術(卵管に小切開を入れて卵管内容物を排出)、
★妊娠週数が小さくて卵管がまだ破裂していない場合は、卵管を切除せず、卵管圧出術や卵管切開術で卵管内の内容物を除去するだけで済ませることもあります。
②注射: 治療の基本は手術ですが、子宮外妊娠を妊娠5週(生理1週間ちょっと遅れ)迄の超初期に見つければ注射(筋肉注射又は点滴)で治すことができます。90%の確率で注射で治すことができます。
胎児が子宮外に見え、児心拍が見える位まで成長すると(妊娠6週以上では)注射での治療は成功率が下がります。
注射療法が成功すると、尿の妊娠反応は1~2週間がかりで次第に薄くなり、その後、出なくなります。
例外中の例外ではありますが、注射療法で尿の妊娠反応がほとんど出なくなって「ほとんど治った」と一安心した頃に、腹腔内出血が起きて手術が必要になることもありますので最後まで(注射後1か月位は)よく経過を観察します。
子宮外妊娠であっても超初期に発見できると、卵管切除術を避けられ可能性があります。
妊娠したら早めに来院して下さい。
内外同時妊娠:
子宮内妊娠と子宮外妊娠と同時に妊娠していることがあります。通常の妊娠では、1人/2万人と極々稀ですが、体外受精で妊娠された方では、1人/100人~1人/500人と起こりやすくなります。
子宮内に妊娠していることを確認しても、子宮の外にもいることがあるので注意して診察します。
子宮外妊娠の反復は10~15%:
子宮外妊娠した方は、次回の妊娠でも10~15%の確率で子宮外妊娠を繰り返しますので注意して診察します。
子宮外妊娠の自然治癒:
子宮外妊娠であったが、外妊した児が育たず自然に消滅することがあります。その場合はLuckyで特に治療の必要もありません。妊娠反応も次第に弱くなって出なくなり、1か月以上後には次の生理が自然に来ます。
2~3週間位、経過を追って妊娠反応が次第に弱くなり、出なくなるのを確認します。
関東連合学会誌’10、 ガイドライン産科編’14、’17、 産婦人科研修の必修知識’16-’18、
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