04】妊娠後期: ₁₄₎B群溶血性連鎖球菌=B群溶連菌=GBS (詳細)

B群溶血性連鎖球菌=B群溶連菌=GBS詳細版)
深谷市母子手帳p69にも記載があります。

B群溶血性連鎖球菌(GBS)とは? GBS母子感染とは?
★B群溶血性連鎖球菌は略してB群溶連菌とも言います。英語ではGroup B Streptococcusですので略してGBSともいいます。
★GBSは常在菌で男女問わず、成人の約1/3は腸内に保菌しています。
★女性では膣、産道内にも、10~30%の方にいます。いても特に悪さはしませんが、分娩時に膣内にGBSがいると、胎児が産道を通過するときに、抵抗力の弱い胎児に感染して発症する事があります。
★GBS陽性(GBSがいる)のお母さんから生まれた新生児の約半数にGBSが検出されます。
★GBSが検出された新生児の1%に新生児GBS感染症が発症します。発症する確率は低いですが、一旦発症すると、高率に重症になり新生児死亡15%、後遺症6~15%起こります。日本では年間500~600人GBS感染して発症します。
★新生児GBS感染症は細菌性母子感染の表的なものです。

«★»妊婦にGBSがいる時に、
A)予防処置しない場合、新生児に死亡又は後遺症が、0.01×0.2=0.002(1人/500人)起こりますが、
B)予防処置した場合、(陣痛開始で入院した時、赤ちゃんが生まれる前に、お母さんにビクシリン点滴)、1/6に(1人/3000人)に減ります。

 

新生児GBS感染症には、早発型と遅発型があります。
発型(生後6日以内に発症する型)
★新生児GBS感染症の75~90%が早発型がです。
★ほとんどが生後6~12時間以内に発症します。
★早発型では、特に炎の症状(呼吸困難,呼吸が早い、チアノーゼ、顔や手足が紫)が出生直後(数時間以内)から起こることが多いです。
★その他、敗血症、髄膜炎を起こすこともあります。


A)
炎の症状:呼吸困難(呼吸が苦しそう)、呼吸が早い、チアノーゼ、顔や手足が紫色、ぐったりしている、哺乳力低下、低体温36.0℃以下。
B)血症の症状:ぐったりしている、自発運動の低下、無呼吸、哺乳力低下、体温調節障害、発熱(37.5℃以上)、
C)膜炎の症状:ぐったりしている、ウトウトと眠りがち、無呼吸、哺乳力低下、痙攣、硬直、嘔吐、発熱(37.5℃以上)。


発型
生後7日~3ヶ月)
新生児GBS感染症の10~25%が遅発型です。
★生後10日前後で発症することがある為、退院後、自宅で症状に注意が必要です。
★症状がはっきりしない事も多く、ぐったりしている、見るからに具合が悪そう、何となくおかしい、元気が無い、飲む力が弱いで気づく事が多いです。その様な時は熱が無くて注意です。敗血症でも症状軽微の事があります。
★遅発型では、膜炎、血症が起こり「肺炎の呼吸困難症状」は少ないです。
★遅発型新生児GBS感染症では、半数はお母さんがGBS保菌者ですが、半数は保菌者ではない(偽陰性の可能性もあります)ので、生後に赤ちゃんが周囲から感染した可能性があります。
«★»生後3か月くらいまでは、
新生児を世話する時は、手洗い又は手指をアルコール毒液等で消毒をしてください。
ミルクを与える時は乳瓶の消毒、母乳を与える時は首の消毒等に気を付けてください。

 

妊婦のGBSの検査時期 
★GBSは、いても一時的な事が多く、長期にわたっているわけではありません。妊娠中出たり消えたりしているので、通常、妊娠初期や中期には検査しません。
★日本では妊娠33~37週の間に検査します。なるべく分娩に近い時期に検査します。
★分娩前5週間以内の検査が良い治療成績を出しています。
★米国のCDCでは妊娠35~37週での検査を推奨しています。
«★»上記時期検査でGBS陽性であれば、娩時に母親がB群レンサ球菌を膣内に持っている確率は、87%です。
«★»上記時期検査で陰性であれば、娩時に母親がB群レンサ球菌を膣内に持っていない確率は、96%です。
★何らかの感染症で何か抗生物質を服用していた方は、服用中や服用直後では影響を受けるので、抗生物質服用後7日以上たってから検査をします。

 

妊婦のGBSの検査法
★基本は、膣口部と肛門を綿棒でぬぐい、顕微鏡検査や細菌培養します。(肛門内も検査しないとGBS偽陰性になることがあります)。
★GBSは基本的に腸内に多くいます。しかし肛門や膣にもいます。
★妊娠中に尿の細菌検査をすることはあまりありませんが、もし尿中にGBSがいる場合は産道内にGBSがしっかり定着している事のしるしなので陣痛開始時に後述のビクシリンの点滴をします。

 

妊娠33~37週の検査でGBS菌がいたら。GBS母子感染予防の為に、??
陣痛開始で入院した時に、赤ちゃんが生まれるに、お母さんにビクシリン(GBSを殺す抗生物質)の点滴をします。入院時に1回目、その4時間後に2回目の点滴します。分娩前に少なくとも2回は点滴して十分消菌したいです。
★点滴のビクシリンは胎盤を通過して胎児に移行し胎児感染を防ぎます。
★1回のビクシリン点滴で、殺菌に必要なビクシリンの臍帯血中濃度(0.1㎎/㎗)は4時間しか維持できないので、4時間毎に点滴を行う必要があります。
★ビクシリンが羊水中に移行し羊水中で最大濃度になるまでに2時間かかります。その為、娩出2時間前に(できれば4時間前に)点滴を開始することが望まれます。
«★»母体GBS陽性の場合、生まれる間際に来院するのではなく陣痛が開始したらめに(分娩になる4時間以上前に)来院お願いします。
破水で入院された時でも、上記の点滴を開始します。

妊娠中に1度でもGBSが検出されたら陣痛開始時に上記点滴をした方が安全と思います。35~37週の検査で偽陰性の可能性もあるので。
上記の点滴でGBSの母子感染が1/6位に減ります。0にはなりません。0にならない原因の中に、「検査での偽陰性」の問題も一部含まれていると思われます。
上記の点滴を3日間行うとGBSを完全に除菌できます。完全除菌までには3日かかります。

 

妊娠33~37週でGBSを調べなかった場合調べたが結果が出ていない場合。
下記のいずれかの場合には、陣痛開始で入院した時、又は破水で入院した時ビクシリンの点滴を行います。
❶ 分娩中の摂氏38.0度以上の発熱。
❷ 破水後、18時間以上経過している。
❸ 妊娠37週より前の破水・分娩。

 

妊娠33~37週でGBS陰性(GBSいない)でも、上記の❶~❸がある場合、
偽陰性の可能性(5%程度)を考えて、ビクシリン点滴をしようという意見もあります。
★母体GBS性から生まれた新生児GBS感染症では、死亡又は後遺症は14%に起こります。
★偽陰性をなくすための検体採取法
①35~37週でGBS検査をする。(ビクシリン点滴の効果があるのは、検査時期が35~37週時である。分娩5週間以内のGBS検査でないと分娩時の培養結果と相関しない)という研究があります。
②膣鏡をかけずに膣入口部から採取
③肛門内から採取

 

妊娠中にGBSが検出されても、
★GBSがいても長期に菌がいることは少なく、自然にいなくなることもあります。
★又妊娠初期や中期にGBSがいても治療(菌を殺す抗生物質投与)はしません。一度消菌しても再度出て来ることがあるので。
★妊娠中にGBS検出されても特に自覚症状もなく変わりはありません。問題ありません。
★GBSがいても、早産、前期破水の原因にならないので、抗生物質投与(消菌)しません。

 

新生児GBS検査
★臍帯血培養、胃内容液や鼻腔ぬぐい液等で細菌培養検査したり、血液で白血球、CRPを調べることもあります。
★血液中にGBSが検出されると敗血症(菌血症)の可能性がありまが、出生直後の、血算、CRP、臍帯血、胃液培養等では、GBS感染症の早期発見や敗血症の指標とはなりません。
★新生児GBS感染が認められたらNICU(新生児集中治療室)に搬送して点滴治療します。

 

抗体(免疫)は?。ワクチン開発中
★GBSの抗体(免疫)を持っているのは、成人では10人に1人です。
★GBSに対するワクチンは開発中です。お母さんに接種してGBSに対する抗体(免疫)を作り、母子感染を防ぎます。
★GBSは、次の10種の型があります。Ia型、Ib型、II型、III型、IV型、V型、VI型、VII型、VIII型です。
★生後3か月(90日)未満の乳児の侵襲性B群レンサ球菌感染症の血清型を調べるとIII型(48.9%)、Ia型(22.9%)、V型(9.1%)、Ib型(7.0%)、II型(6.2%)の順です。
★III型、Ia型、V型に対する3価のワクチンができれば、乳児のB群連鎖球菌感染症の85%を防げる可能性があります。III型、Ia型、V型、Ib型、II型の五価のワクチンも検討されています。
★現在3価ワクチンが開発中で第3相臨床試験まで開発が進んでいます。実際に認可されて使われるようになるにはまだ3~5年以上かかりそうです。
★今後型別の検査、型別の治療も考慮されるかもしれません。

 

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