50】不妊: ₁₂₎排卵障害 と 排卵誘発剤、排卵促進剤

排卵障害 と 排卵誘発剤、排卵促進剤

🍁排卵があるかないか、良いか悪いか(排卵障害の有無)の判断法。
①~⑤ですが、基本は①と②です。

基礎体温表
基礎体温表上で低温期、高温期が有れば排卵があります。
基礎体温を測定していない方は、まず、1~2カ月測定して基礎体温表に記入してください。
 

超音波で卵胞検査
★病院で、超音波で卵胞の直径(卵胞径)を4~5日毎に測定します。
★卵巣内には、直径数ミリの水が入った風船の様な、卵胞が多数あります。各卵胞内には「卵胞液」と「卵が1個」入っています。
★多数ある卵胞のうちの1~2個が排卵に近づくにつれて発育して大きくなります。
★月経中~月経直後は卵胞径は数ミリですが、排卵に近づくにつれて20㎜以上にまでに発育します。20~24㎜以上になると卵胞が破裂して排卵します。そして卵胞は消失します。
★Clomid服用時では、25㎜以上になった時排卵します。
★超音波で診察すると、あと何日位で排卵しそうか、排卵があったのか確認できます。

 

③月経が順調か不順か
★月経が規則正しく来ている方は、排卵があるらしいとわかります。(しかし本当に排卵があるかどうかは、基礎体温のグラフから判断します)。
★月経不順の方は排卵が無い、排卵が有ったとしても排卵が悪い可能性、排卵が遅れる、卵の質が悪い可能性、があります。

基礎体温表で高温期が10日以上あるか
基礎体温表をみて高温期が10日未満であると、排卵はあるけど、排卵がうまくいっていない、良い卵が出て来ない、又卵巣の働きが悪いと考えます。

基礎体温表で、低温期と高温期の差が0.3℃以上あるか
基礎体温上で、低温期と高温期の差が0.3℃未満だと、排卵が有るけど、排卵がうまくいっていない、良い卵が出て来ない、又卵巣の働きが悪いと考えます。

 

🍁排卵誘発が必要な方
排卵がない方、(無排卵)
排卵がたまにしかない(月経不順の方)とか、排卵が遅れるとか、排卵が悪い方、良い卵が出ていない可能性がある方。
基礎体温表で高温期が10日未満で短い。卵巣機能不全(卵巣の働きが悪い、卵巣から黄体ホルモンの分泌が悪い、排卵はあるが、良い卵が出ていない)と考えます。
基礎体温表で低温期と高温期の差が0.3℃未満と少ない。卵巣機能不全(卵巣の働きが悪い、卵巣から黄体ホルモンの分泌が悪い、排卵はあるが、良い卵が出ていない)と考えます。
排卵は正常そうだけどなかなか妊娠しない方(排卵はあるが卵の質が悪い、良い卵が出ていない可能性あります)。
妊娠率を上げる為に使用します。
人工授精する場合、妊娠率を上げる為に排卵誘発を併用します。
体外受精する場合、たくさんの卵を育てて、一度にたくさん採卵する為に、強力に排卵誘発します。

 

🍁排卵誘発法
弱い順の表示します。②から⑤へ進む事が多いです。①~⑤を組み合わせて行うこともあります。
漢方薬
女性ホルモン(内服、注射)
排卵誘発剤の内服(5日間)
排卵促進剤
・HCG注射(1回だけ)、排卵直前に排卵を促進する為に1回だけ注射します。
・スプレキュア点鼻(1~2回だけ)、排卵直前に排卵を促進する為に1~2回だけ点鼻。
排卵誘発剤の注射(毎日)

その他、排卵誘発剤ではありませんが、排卵を良くさせる為に必要に応じて⑥~⑧を行うことがあります。
極端な痩せ(極端なダイエット)や、肥満は排卵が悪くなります。
体重を正常範囲に近づけることで排卵が回復します。完全に正常範囲にしなくても近づけるだけでも排卵が回復します。
乳漏症(高プロラクチン血症)。
★乳汁分泌は出産後に出ますが、出産後でもないのに出る方がいます。
★乳汁分泌が出るといっても大抵の場合は、強く絞るとにじむ程度の微量の事が多いですが、少しでも乳汁分泌があると卵巣機能が抑制され排卵が悪くなります。
★血液検査で血中のプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)を測定すると高値の事が多いです。
★プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)を抑制する薬(乳汁分泌を止める薬)を週1回1錠数週間服用すると乳汁分泌が止まり、排卵も回復します。
糖尿病があると排卵が悪くなります。
★カロリー制限して血糖値をコントロールすると排卵が良くなります。
★潜在的に糖尿病がある(糖尿病が隠れている)方がいます。潜在的な糖尿病が有るか否かは75gブドウ糖負荷試験で調べます。
★75gブドウ糖負荷試験では、75gブドウ糖を飲む前、飲んだ後1時間後、2時間後と3回採血し血糖を調べます。
★潜在的な糖尿病がある方は、メトフォルミンという糖尿病薬(糖尿病薬の中でもごく弱い薬)を少量ずつ数ヶ月服用するとその間に排卵が良くなります。

 

🍁排卵誘発法(前記をもう少し詳しく説明します)
漢方薬(温経湯、当帰芍薬散等)を服用します。
★一種類を1~2か月服用して効果が無ければ他の漢方薬に変えます。
★ごく軽い排卵障害の方は、漢方薬で排卵することがあります。

女性ホルモン(内服、注射)(卵胞ホルモン=エストロゲン、黄体ホルモン=プロゲステロン)
★女性ホルモンを数日~数週間投与すると、服用後月経周期が順調になり、排卵が良くなることが多いです。
★Pillは女性ホルモンです。Pillを1~2か月服用すると卵巣の働きが良くなり服用後月経周期が順調になり、排卵が良くなることが多いです。排卵を良くする目的でPillを1~2カ月間短期に服用することがあります。

排卵誘発剤・内服(クロミッド、セキソビッド、フェマーラ)。①∼②で排卵しない方に処方します。
★妊娠率20%です。20%というのは自然妊娠と同じで、そこまで確率に上がるということです。
★クロミッドを月経開始5日目から1日1錠5日間服用すると、14日目頃に排卵します。

   

連続服用すると排卵効果が悪くなるので、4~5周期連続服用したら、少し休薬します。
欠点として、人により、頸管粘液の減少、又子宮内膜が薄くなるがあり、排卵は起こるが妊娠しにいことがあります。
クロミッドで、頸管粘液の減少、子宮内膜が薄くなる欠点が出る場合は、セキソビッドやフェマーラに変えてみます。
★セキソビッドを月経開始5日目から1日4~6錠7~10日間服用します。セキソビッドのほうがクロミッドより頸管粘液の減少、子宮内膜が薄くなる欠点が少ないですが、排卵誘発作用はクロミッドほど強くはありません。
★フェマーラを月経開始5日目から1日1錠5日間服用します。フェマーラの方がクロミッドより、頸管粘液の減少、子宮内膜が薄くなる欠点が少ないです。現在フェマーラは保険がきかず1錠600円かかります。(600円×5錠)
頸管粘液の減少子宮内膜が薄くなる欠点を補う為に、
a)クロミッドやフェマーラを服用開始を月経開始5日目ではなく3日目から服用していただく事もあります。又
b)月経8日目頃から3~4日間、下記⑤にあるHMG注射を併用することもあります。

排卵促進剤
★排卵促進剤・HCG注射(1回だけ)、排卵直前になったとき排卵を促進する為に1回だけ注射します。注射後約24~36時間後に排卵します。
★排卵促進剤・スプレキュア点鼻(1~2回だけ)、排卵直前になったとき排卵を促進する為に1~2回だけ点鼻します。HCG注射すると後述の卵巣過剰刺激症候群が起こる可能性がある場合には、その予防の為にHCGを使わずスプレキュア点鼻を使います。

排卵誘発剤・注射(HMG、pureFSH、r-FSH等)、
▲妊娠率約30%です。
▲月経開始3~5日目から排卵日直前まで、基本的に毎日注射します。

▲卵胞の発育状況を見ながら、発育が悪いようなら次第に量を増やす(Step up法)や、初めは多めに開始し発育が良いようなら次第に量を減らす(Step down法)のいずれかを行います。
▲毎日注射に通院するのが困難な方は、毎日自宅で行う自己注射法も指導します。
▲たくさん排卵し過ぎたり、卵巣が腫れ過ぎること(卵巣過剰刺激症候群)が起こる事があるので、4~5日に1度は卵胞の発育を診察し注意しながら注射の量を調節します。
▲体外受精専門クリニックでは場合では、たくさんの卵胞を育てて一度に沢山の卵を採取(採卵)するので、HMGやFSH注射を多く使いますが、通常の病院ではそれほどの量は使わないので実際には卵巣過剰刺激症候群は殆ど起きません(0ではありませんが)。
    

 

副作用等
排卵誘発剤の内服や注射で、多胎(双子、三つ子)の確率は高くなります。
双子は度々ありますが、三つ子は極めて稀です。双子が生まれる確率は、自然の状態で1%未満ですが、クロミッド服用で1人/20人に、HMG連続注射での排卵誘発では1人/5人に上がります。
▼奇形は起こりません。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
排卵誘発剤の注射(HMG、pureFSH)の連日注射で、稀に排卵数日後から卵巣過剰刺激症候群(OHSS)(卵巣が腫れすぎる)が起こることがあります。
(自覚症状としては、腹部膨満感、下腹部痛、吐き気、嘔吐、体重急増)
卵巣過剰刺激症候群が起こっても、妊娠成立しない場合では次の月経が来る頃には自然に良くなります
排卵後妊娠が成立すると卵巣の腫れが更にひどくなることがありますが2~3週間経過を見ているうちに良くなります。
卵巣の腫れがあまりひどく、腹水や胸水が溜まったり脱水状態になる場合は1~2週間入院し経過観察又は治療することもあります。多くの場合1~2週間その状況をしのげは自然に良くなります。
・・・当院ではここ20年間入院するほどになった方はいません
卵巣が腫れ過ぎるかどうかは、個人差が大きいです。多嚢胞性卵巣症候群の方や、若くて卵巣の反応が良すぎる方は卵巣過剰刺激症候群になりやすいです。腫れるか否かはやってみないとわからない面があります。
体外受精をする場合はたくさんの卵胞を育てて一度に沢山の卵を採取(採卵)するので、HMGやFSH注射を多く使う為卵巣過剰刺激症候群が起こりやすいです。
通常の病院ではそれほどの量は使わないので実際には卵巣過剰刺激症候群は殆ど起きません(0ではありませんが)。
排卵誘発のクロミッド内服ではまず起こりません。

 

卵巣過剰刺激症候群の予防法
HMGやFSH注射を連日する際、4~5日毎に卵巣を観察し、卵巣過剰刺激症候群の危険がある場合、日々の注射の量を減らします。
卵巣過剰刺激症候群の危険がある場合は、排卵促進目的のHCG注射(1回)をせず、代わりにスプレキュア(点鼻、2回位)を使って排卵促進します。
卵巣過剰刺激症候群が起き易い方は、HMG注射ではなく、pureFSHr-FSHを使います。
卵巣刺激症候群が起きそうなった方は、その月は排卵誘発、排卵促進を途中であきらめて中止(キャンセル)することもあります。

 

【今日の不妊診療】鈴木秋悦,’13       【不妊,不育症診療,パーフェクトガイド】16.4

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