妊娠中のサイトメガロウィルス(CytomegaloVirus、CMV):(詳述):
妊娠中に感染すると胎児に難聴や脳障害が起こる事があります。
?厚労省のサイトメガロウィルス研究班(班長:藤井知行,東大教授)は、’14年11月に「サイトメガロウィルス妊娠管理マニュアル」を作成し、’15年1月には全国の産婦人科医に配布しました。
厚労省は「1日も早く医師と妊婦にサイトメガロウィルスの危険性を認識してほしい」と勧告しています。
サイトメガロウィルス(CMV)は健康な方が感染しても、ほとんど悪影響ありません。7割位の方が、成人になる前に子供の頃に知らないうちに感染し知らないうちに治っていて、免疫(抗体とも言います)を持っています。しかし、子供の頃にサイトメガロウィルス(CMV)に感染したことが無く、免疫を持っていない妊婦様が3割位います。免疫を持っていない方は妊娠中に感染する可能性があります。
サイトメガロウィルス(CMV)の免疫が無い妊婦様が妊娠中に初めて感染すると胎児に異常が起こることがあります。妊娠中に初感染する確率は1~2%です。
母体感染すると約4割に胎児感染が起こります。
胎児感染してもほとんどが軽症で無症状ですが、胎児感染の約2割が重症胎児感染となります。重症胎児感染では難聴や脳障害が起こります。重症の胎児感染では胎児に異常(超音波検査で胎児に異常)が見られます。
言い方を変えると、たとえ胎児感染があっても超音波検査で胎児に異常が見られなければ問題が無いことが多いです。
サイトメガロウィルス(CMV)の胎児感染は1人/300人に起こります。重症の胎児感染は1人/1000人程度でおこります。他の母子感染(トキソプラズマ、梅毒、風疹、ヘルペス等)に比べても胎児感染する確率が高く、後遺症を残すので最近注目されています。
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CMVの免疫が有るか無いかは、妊娠初期に血液検査CMV-IgG(サイトメガロの古い免疫)を調べます。
CMV-IgG(+)の場合、既に感染したことがあり、古い免疫を持っている事(既感染)を示しています。・・・問題無さそう。
CMV-IgG(―)では、感染したことが無く未感染で、免疫を持っていない為、これから感染しない様に注意が必要です。・・・要注意。
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サイトメガロウィルス(CMV)の追加検査
ちょっと専門的になって、ややこしくなります.
CMV-IgG(+)の場合、過去に感染したことがある事(既感染)を示していますが、
①それが遠い過去(子供の頃の)の感染か?・・・問題ない
②最近の過去(妊娠してから)の感染か?・・・問題ある事が有る
区別が必要です。
①なら問題ないのですが、
②だと問題があることがあります。
①②を鑑別する為に、更にCMV-IgM(Ig-Mとはサイトメガロの超新しい免疫の事です)を追加検査して調べます。
CMV-IgM(ー)の場合では、①なので、問題ないです。
CMV-IgM(+)の場合では、②で、最近の過去の感染かもしれないので、問題がある事があります。
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サイトメガロウィルス(CMV)の追加の追加検査
CMV-IgM(+)の場合では、本当に最近の感染かどうか、更に血液検査IgG avidityで確認します。
①IgG avidity高値では、「CMV-IgM(+)の場合であっても」、遠い過去の感染であることが確定し、問題が無いです。
②IgG avidity低値ではやはり最近(直近)の過去感染、今回の妊娠直前~妊娠してからの感染を示していて、注意が必要です。
・・・・・・注意して超音波で胎児を観察します。又
・・・・・・出生後は、出生直後に異常が無くても、生後2年位は小児科で経過観察していただきます。
IgG avidity検査は保険がきかず8000円かかります。
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下記は、CMVの免疫のない方はお読みください。?
既に免疫のある方でも、再活性化や再感染が起こって(確率は低いですが)稀に胎児感染することがあるので、できれば、読んで感染予防に心がけていただいた方が良いです。
CMVは幼児,年長児の唾液や尿などに多く潜んでいます。幼児,年長児のお世話をする時に感染し易いです。これが妊婦への主要感染ルートです。
免疫の無い妊婦様は妊娠中にCMVに感染する危険性があるので、下記の予防対策をしてください。下記の対策で妊娠中の感染が1/10に減少したというデータがあります。
【妊婦のサイトメガロウィルス(CMV)の感染予防策】
次の行為の後は、こまめに石鹸と水で15~20秒手を洗ってください。
①おむつ交換、
②子供の鼻やよだれを拭く、
③子供のオモチャを触る、
④子供への授乳や食事の時。
子供と食べ物、飲み物、食器を共有しない。
オシャブリを口にせず、歯ブラシを共有しない。
子供とキスをするときは、唾液の接触を避ける。
子供の唾液や尿が付着してそうな、オモチャ、カウンターとの接触は注意。
免疫が無い方は、妊娠中に感染したか否か、妊娠9カ月で再検査します。
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ここから先は、難しいので必要のある方だけお読みください。?
胎児,新生児,幼児CMV感染の症状
①胎児感染の症状(超音波検査で胎児に異常が見られます):
胎児発育不全(これが多いです)、小頭症、水頭症(脳室拡大)、脳室周囲石灰化(脳内石灰沈着)、胎児腹水。
②乳幼児期の症状:
低体重児、肝脾腫、肝機能障害、小頭症、水頭症、脳内石灰沈着、貧血、紫斑、黄疸、網膜症、白内障、肺炎、痙攣。
・・・・・・難聴は半数以上が生後6か月以降に発症します。出生直後に異常が無くても、1~2歳以降で聴力障害、視力障害、知能障害が出ることがあるので、2歳くらいまでは観察します。
症状には、極く軽症から重症までいろいろ程度があります。
新生児に感染があるかどうかは、出生直後の臍帯血(健康保険適応)や、新生児(生後2~3週間以内)の尿(保険が効かず自費)でCMVを調べます。
母がIgM(+)だった場合は全児、小児科で生後2歳くらいまで経過観察していただきます。
胎児感染が有る場合、
①たとえ、胎児感染があっても、妊婦健診時の超音波検査で胎児に異常が見られない場合は、問題が起こることは少ないです。
②胎児感染があって、超音波検査で胎児に異常がみられる場合は、問題があることが多いので大学病院に紹介します。胎児治療をすることがあります。
CMVの治療、ワクチン
①胎児にサイトメガロウィルス感染が明らかになった場合、胎児治療や新生児治療を行うことがあります。その治療を行う高度な医療機関が「サイトメガロウィルス妊娠管理マニュアル」に掲載されています。日本全体で見ても今のところその医療機関の数は多くはありません。胎児治療をする場合は、その医療機関に紹介します。
②CMVの治療には、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、免疫グロブリンを用います。一部の児には効果があります。
③現在のところワクチンはありません。ワクチンは開発中です。
【産婦人科研修の必修知識’13】、 ガイドライン産科編’14、 【サイトメガロウィルス妊娠管理マニュアル】’14、 日経新聞’15.2.18、 深谷市母子手帳’16、p69
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